お勧めのコーカサス本紹介「民族と言語 (多民族国家ソ連の興亡 1)」
こんにちは★
宵宮エメです。
しばらくの間、毎週2-3回は東欧関係の書籍をネタバレをしすぎない程度の書評を書きます。
ちなみにプロパガンダや忖度は嫌いなので、私自身の率直な感想です。
今回紹介するのは
塩川伸明(2021)
「民族と言語―多民族国家ソ連の興亡I」
です。
著者はロシア政治史が専門の東京大学の名誉教授です。
ちなみに本書は2004年に出版された同書のオンデマンド版です。
また著者の執筆した多民族国家ソ連の興亡シリーズは、いくつかありこちらもお勧めです。
本書はロシア帝国末期からペレストロイカぐらいまでのロシア&ソ連の民族と言語政策について書かれたものです。
言語教育そのもの以外にも、(ソ連にとって)民族とは何かということも書かれています。
そもそも民族の分け方は近年までは曖昧なことも多く、ナショナリズムは伝統に乗っ取っているようで新しい考え方であるなどが分かる。
特に少数言語は話者がいないと、やはり保存は難しいのは、ソ連に限らずどの地域でも同じですね。
個人的には、文章語としての歴史があまりない民族の言語…例えば遊牧民族や口承文芸が盛んで記述する必要がなかった民族、口語と文章語が長い間異なっていた地域&民族の言語も、保存が難しいですと感じます。
後者の場合、高等教育を受ける際に、自民族のアカデミックな単語で該当するものがなく、外国語…例えばソ連の場合はロシア語の借用語を使わざるを得ないことが多々ありますし。
このような問題は、カザフスタンやウズベキスタンのような中央アジア諸国やコーカサスですと、アゼルバイジャン(文章語がペルシャ語でロシア帝国支配化になった際に、ペルシャ語の地位がロシア語に変わっただけ)で特徴的ですね。
一方、同じコーカサスでも、ジョージア&アルメニアの場合は、独自の文字を持っていること&他民族の支配で言語を奪われる危機感があるからなのか、外来語を取り入れる際に、自民族に翻訳することもあるなどと、言葉を守る事に力を入れているように見えます(良し悪し関係はない)
もし気になる方がいたら読んでみてね★
…ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
【参考文献】
・塩川伸明(2021)「民族と言語―多民族国家ソ連の興亡1」岩波書店