日本語で見れる東欧&旧ソ連映画①「ダンサー:そして私たちは踊った」

こんにちは★

宵宮エメです。

しばらくの間、毎週一回は東欧映画を紹介&ネタバレをしすぎない程度に感想を書きます。

ちなみにプロパガンダや忖度は嫌いなので、私自身の率直な感想です。

さて今回紹介するのは、レヴァン・アキン監督の2019年の映画

です。

ジョージア語での原題は で、翻訳すると日本語では副題になっている「そして私たちは踊った」のみですね。

映画の内容を簡潔にまとめると
ジョージアの国立舞踏団を舞台にダンサーたちを描いた作品。主人公の男性ダンサーであるメラブはパートナーのマリともに、幼い頃からトレーニングを積んできました。
そんなあるとき、新人の実力者(しかもダンスを始めたのは13歳かららしい)のイラクリの登場により、彼の世界は大きく動き出すことになるのです。
ちなみに第92回アカデミー賞国際長編映画(外国語映画)部門のスウェーデン代表に選出された作品です。

何と本日(2023年12月15日)時点でAmazon primeで無料で見られますので、気になる方は見てね★
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC-%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E7%A7%81%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AF%E8%B8%8A%E3%81%A3%E3%81%9F%EF%BC%88%E5%AD%97%E5%B9%95%E7%89%88%EF%BC%89-%E3%83%AC%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%92%E3%82%A2%E3%83%8B/dp/B08F3V3T8Y/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=89FL954WYDF0&keywords=%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC%E2%80%95%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E7%A7%81%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AF%E8%B8%8A%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%8D&qid=1702652397&sprefix=%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC+%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E7%A7%81%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AF%E8%B8%8A%E3%81%A3%E3%81%9F+%2Caps%2C286&sr=8-1

あ、ちなみにこの映画には男性同士の濡れ場(そこまで露骨ではないが)があるので、苦手な方はご注意下さい。

↑にもあることから察することができるかもですが、主人公のメラブはライバルのイラクリを、段々恋愛対象として見るようになります。
ただし、彼らが同性愛者なのか両性愛者なのかは描かれていませんが、どちらにも女性の恋人がいるようです(彼女たちが同性愛を隠すためのフェイク恋人だったら嫌だな…と思ったのは私の傲慢なのかもしれないが)

で、簡潔に評価すると、★四つくらいですね。私的に良作です。

特に私がこの映画を視聴して特に印象的だった点が二つあったので、以降書きます。

①ジョージアにおけるLGBTQ事情

この映画の冒頭で、メラブたちの舞踊団のメンバーの一人が同性愛者であることがバレて、修道院送りになるというかなり衝撃的な話が出てきます。

↑のようなことが実際にあるのかとジョージア人の夫に尋ねたところ「実際に見たことはないが、可能性としてはありえる」と言われました。

ジョージアでは、同性愛は近隣諸国と異なり、違法でもない(隣国のロシアでは違法、国境は接していないが近隣国のイランやアラブ諸国では違法だったり死刑だったりと厳罰)のですが、私としてはホモフォビアが強い国だと思います。

※同性愛についての世界地図は以下を参考にしました。
https://nijibridge.jp/data/1267/
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/a/062100038/

なぜこのような曖昧な言い方なのかというと、私自身が当事者であるジョージアの同性愛者から話を聞いたわけでも読んだわけでもなく、複数のジョージア人の反応から推察したからです。

また主演のレヴァン・ゲルバヒアニ氏のインタビューを見るに、実際に映画を放映した時の極右団体や扇動された人々の抗議活動が凄まじかったことから上記の考えに至りました。

※ゲルバヒアニ氏のインタビューは以下のものを読みました。https://globe.asahi.com/article/13165579

私個人としては、ジョージア(というかコーカサス全体が)伝統的に男権主義、かつホモソーシャル的なのでは?と見なしていますが。詳細を書くと長くなるので今回は省きますが。
(だから私が日本に留学していたとは言え、価値観が典型的なジョージア人男性に見える夫と結婚した時は周囲の知り合いは皆驚きました…)

この映画では、ジョージアの誇りとも言える、男権主義の象徴ジョージアの伝統舞踊と(ついでにジョージア正教会)が批判的に描かれているのも印象的でした。

だから極右団体や一部の聖職者が過激な抗議活動をしたのかもしれません…(-_-;)

ネタバレになるので詳細は伏せますが、メラブのパートナーであるマリはLGBT的にも理解者なんでしょうね。

ちなみにホモソーシャルについてはイヴ・K・セジウィック氏の「男同士の絆」や上野千鶴子氏のいくつかの著書を読むことをお勧めします。

②現代ジョージアにおける普通の人の生活について

個人的には↑の同性愛云々よりもこちらの方が印象的でした(この映画のLGBT要素もマイノリティかもしれないけど、ある意味日常生活の一部)

この作品に出てくるジョージア(主にトビリシ)の景色は観光案内で見られるような美しいものではなく、人々の喧騒や古い建物、人混みの公共バスなど、ある意味現実的かつ日常的なものです。

ある意味、生きた街並みなのではと感じました。

※そして↑のような光景を以前にジョージアで滞在した時に私は何度も見ました。

特に(夫曰くイタリア式の)ベランダ部分だけが木造の集合住宅がしばしば出てくるのが印象的でした。
初めて↑を見たとき耐震強度が凄まじく不安で、私としてはあまり住みたいとは思えなかったですが…(-_-;)

また登場人物のほとんどがジョージアでの生活に希望を感じているように思えず、若者はEU圏などの豊かな外国に移住することを憧れている、中高年はソ連崩壊の荒波に打ちひしがれている人が多いように見えました。

実際、私の夫も含め、ジョージアの若者層(特に優秀な人や労働者として活躍を期待できる人)は国外で労働している人が多く、夫の親族や身内でも若い人は海外で労働や移住している人が少なくなく、人口流出が深刻なのではと感じます。

そのような背景に対して、この映画で見られるジョージアの伝統舞踊や音楽はひたすら美しく躍動的で、対照的でした。

もし、このブログを見て見てみたい方がいらっしゃったら、Amazon Prime等で視聴するのをお勧めします★

なお私は両日共に14-17時の待機ですが、イベントそのものは11時からやっております。
会場の住所は以下の通りです。

〒110-0005 東京都台東区上野5丁目9 2k540 AKI-OKA ARTISAN(ニーケーゴーヨンマル アキオカ アルチザン) イベントスペース

なお詳細は以下の通りです
https://x.com/rumirockstore/status/1734860450662350908?s=20

それではお会いできるのを楽しみにしております。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

【参考文献】

★オフライン及びkindle

・Sedgwick, Eve Kosofsky著、上原早苗・亀沢 美由紀訳(2001)「男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望」名古屋大学出版会

・上野千鶴子(2018)「女ぎらい ―ニッポンのミソジニー」朝日新聞出版

★映像作品
・Levan Akin監督(2019)「ダンサー―そして私たちは踊った」ファインフィルムズ

★オンライン

・『ダンサー そして私たちは踊った―ジョージアの青年が同性愛者を演じた理由』「朝日新聞GLOBE+」(2020年2月27日)https://globe.asahi.com/article/13165579(2023年12月15日閲覧)

・『地図で見るLGBT違法の国、合法の国』「ナショナルジオグラフィック」(2016年6月22日)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/a/062100038/(2023年12月15日閲覧)

・『性的指向に関する世界地図」特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ
https://nijibridge.jp/data/1267/(2023年12月15日閲覧)

★ホームページ
・映画「ダンサー―そして私たちは踊った」公式サイト https://www.finefilms.co.jp/dance/

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